うつつ染めがたり > Vol.22  伊藤 嘉奈子さんの『伊藤ウロコ』

登場する方の「人生」を彩る「うつつ染めがたり」

これからも伝統を守りながら築地の人たちを支えていきたいです。

SHOPKEEPER × TOKYO TSUKIJI  Vol.22 伊藤 嘉奈子さん 伊藤ウロコ五代目(専務取締役) 「伊藤ウロコ」 東京都中央区築地 築地市場内 築地に店を構える「伊藤ウロコ」は、明治43年に創業したゴム長靴の専門店。ウロコの名は、水神と商売神である白蛇にあやかって初代がつけたものだそう。ウロコをモチーフにした逆三角形のロゴが、伊藤ウロコの目印です。

ゴム長靴がところ狭しと並ぶ「伊藤ウロコ」には、築地で働く人々に愛される品だけでなく、おみやげとして喜ばれそうなオリジナルのグッズもたくさん。ゴム長靴姿がさまになる五代目の伊藤嘉奈子さんが笑顔で迎えてくれました。

お店の仕事のほかに魚がし横丁広報活動もしています。

伊藤ウロコは、明治時代からゴム長靴の専門店として魚河岸とともに歩んできました。いまでも一品一品、手づくりなんですよ。マグロなど、魚の脂で滑りにくいように耐油底仕様で、天然ゴムの樹液からつくる自然素材なので環境にも優しいんです。

うちはゴム長靴のほかに、水産用の前掛けや調理服、オリジナルのTシャツやトートバッグなども扱っています。築地には外国人のお客さまもいらっしゃいますし、漢字を書いたオリジナルTシャツは、けっこう評判がいいんですよ。じつはこのTシャツのコピーは、私が考えたものなんです。

以前は出版関係の仕事をしていたんですが、父が急に亡くなって、家業を手伝い始めました。出版の仕事が好きでしたし、半年ほどは出版の仕事と家業との二足のわらじ状態でした。正直、ジレンマがありましたが、目の前で母が困っているのを見て家業に専念することに決めました。

いまでは、3店舗あるお店を母や従業員の人たちとみていて、店の仕事の合間に築地の「魚がし横丁」の広報企画室で組合作業もしています。組合の会報をつくったり、取材申請の対応をしたりとけっこう忙しいですね。皆さんに築地のことをもっと知ってもらえたら嬉しいです。

伊藤ウロコ店内

店内で商品を確認する伊藤 嘉奈子さん

伊藤ウロコのオリジナルTシャツ

伊藤 嘉奈子さんとお母さん

築地の旦那衆にとってゴム長靴は大事な道具なんです。

仕事中はいつもゴム長靴を履いています。日に何度も商品を持って店舗を行き来したり、お客さんのところへ商品を納めに行ったりしてよく歩きますね。でも、魚河岸の旦那衆に比べたらまだまだ。旦那衆は、とにかくよく歩きます。今日、ゴム長靴を新調しにいらした恵水産の入澤さんは、いつも朝2時に起きて魚を見て回って、1日に3時間半は築地の中を歩くそうです。
だからこそ、ゴム長靴は「作業履きであるべき」という考えがありますし、築地の旦那衆にとって欠かせない道具なんです。

今日は久しぶりに入澤さんとお昼をご一緒することにします。築地では屋号で呼び合うので、いつもは「恵さん」、「ウロコさん」ですね。恵さんが乗ってきた運搬車のターレーに乗せてもらって、魚がし横丁にある「すし処おかめ」へ行きます。こうやってたまに乗せてもらうことがあるんですよ。

今日は大将に握りをお願いしました。こちらのマグロは、恵さんのところが卸しているんです。美味しそうでしょう。 お昼をご一緒するといっても、いつも食べる時間は5分、10分くらい。さっと食べてすぐ仕事に戻ります。それが築地では当たり前のことなんです。

きれいでいたいという気持ちを忘れたくないですね。

いまは朝4時半に起きる生活ですが、築地で働き始めて新しい発見もありました。毎日、お日様が昇るのを見たり、空模様で雨が降るかなとわかったりします。太陽や風を肌で感じることができるので、以前よりも毎日が人間的なのかもしれません。

出版の仕事をしていた頃は、いつも締切に追われていたこともあって、あまり髪やお化粧に手を掛けていなかったんですよ。でも、接客の仕事をするようになって、いつもきれいでいられるよう気を遣うようになりました。
お客さまと接するからということもありますが、きれいでいたいという気持ちを忘れてしまったら、女性として寂しいなと思うようになりましたね。お店の奥にも鏡を置いて身だしなみをチェックするようにしています。
髪にはとくに気を遣っていますね。やっぱり髪に白いものが混じっていたりするとモチベーションが下がってしまいますから。気になるとすぐに部分染めをします。

母とは同じ女性として髪の話をすることがあります。母は、髪を染めたあとに「この色どうかしら」なんて聞いてくることもありますね。やっぱり幾つになっても女性はきれいでいたいという気持ちを持っているものだなと思います。

店内で接客をする伊藤 嘉奈子さん

伊藤ウロコのゴム長靴

ご主人と築地市場内を散策する伊藤 嘉奈子さん

すし処おかめのご主人

すし処おかめ自慢のお寿司

お寿司を堪能する伊藤さんご夫婦

ゴム長靴を持って歩く伊藤 嘉奈子さん

旦那衆と笑顔で会話する伊藤 嘉奈子さん

活気があって旦那衆が粋なのは築地ならではかもしれません。

私が子どもの頃は、女、子どもは築地に近づくなという感じでしたから、それほど頻繁には店に行ったりはしませんでした。それでも、たまに私が店に行くと、父は黙ってにこにこして迎え入れてくれましたね。何事にも動じずに存在感があった父は、やはり築地の粋な旦那衆の一人だったのだと思います。

まったく違う世界からの転職でしたが、父の姿を見ていたから受け入れられることがあると思います。魚河岸の人は短気な人が多いように思いますが、鮮度が大事な魚を扱っているから、自然とそうなるのかもしれませんね。ゴム長靴でも前掛けでも注文が来るときは、すぐに必要なときなんです。注文が来たらすぐに対応しないと意味がないと気付きました。

この仕事を始めたばかりの頃は、旦那衆に怒られることも少なくありませんでした。みんな、親や兄弟でなくても、ダメなときはすぐに注意してくれるし、面倒見がいいんですよ。活気があって旦那衆が粋なのは、築地という場所ならではかもしれません。
気風のいい旦那衆と一緒に仕事ができるのは嬉しいことです。これからも伝統を守りながら、築地の人たちの仕事を支えていきたいと思います。

築地市場内を散策する伊藤 嘉奈子さん

築地市場内を散策する伊藤 嘉奈子さん

築地市場内での伊藤 嘉奈子さん

「あちこち歩き回るのが好きなので、いまの仕事は性に合っていると思います」と話していた伊藤さん。前職での経験を活かしながら、代々続く家業に新しい視点を盛り込み、力強く前進している様子が伝わってきました。伊藤さんは、女性らしさの中にも江戸っ子らしさを感じさせる方。これからも築地の旦那衆とともに東京の台所を盛り上げていかれることでしょう。

INFORMATION

伊藤ウロコ

伊藤ウロコ

ADDRESS

東京都中央区築地5-2-1築地市場内7号館・1号館

TEL  03-6908-1568

URL  http://www.tsukijinet.com/tsukiji/kanren/ito-uroko/index.shtml

すし処おかめ

すし処おかめ

ADDRESS

東京都中央区築地5-2-1 築地市場内6号館

TEL  03-3541-5450

URL  http://www.tsukijinet.com/tsukiji/kanren/okame/index.html

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