うつつ染めがたり > Vol.30  川原 まさみさんの『大衆割烹かねまん』

登場する方の「人生」を彩る「うつつ染めがたり」

将来、親子でお店に立てたら嬉しいですね。

LANDLADY  × KIKUKAWA  Vol.30 川原 まさみさん 大衆割烹かねまん 女将  「大衆割烹かねまん」 東京都墨田区 「かねまん」がお店を始めたのは明治時代のこと。現在は、五代目にあたるご主人と奥様のまささんがお店を切り盛りしています。ご主人が築地で仕入れてさばく新鮮な刺身や手作りの一品は、何を食べてもはずれなし。まさみさんの細やかな心遣いも温かく、毎日通いたくなる隠れた名店です。

8年ほど前に建て直したというお店は、決して広くはありませんが、川原さんご夫妻との距離感がほどよく居心地満点。今回は、女将である川原 まさみさんに、お仕事のことやご家族のこと、髪のことなどについて伺いました。

お店の長い歴史を実感しています。

うちは創業から約120年の大衆割烹です。創業当時は、醤油屋さんだったそうで、その後、食堂だった時代を経て、大衆割烹になったと聞いています。主人は五代目で、私は籍を入れる2年くらい前からお店を手伝っています。

はじめは、そんなに昔からやっているお店とは知らなかったんですよ。お手伝いを始めてから義母やお客さんに百年以上続いていることを聞いて驚きました。
たとえばこれ、一升瓶が出回る前に使われていたお酒を入れる瓶なんですが、地下鉄の会社の方が持ってきてくれたものなんです。地下鉄を掘っていたら出てきたそうなんですよ。屋号が入っているからかねまんさんのでしょって。こういうときにお店の長い歴史を実感しますね。

主人がまだ子どもだった頃は、義母が一人でお店をやっていたそうです。義父が26歳という若さで亡くなってしまったそうですから、義母は苦労をして主人を育てたのだと思います。そんな姿を見ているからか、主人は本当に義母に優しいんです。いつも優しい言葉をかけていて、私は自分の親にあんなふうにはできないなぁと感心します。

調理場に立つ川原まさみさん

かねまんのお酒

かねまんこだわりの食材

調理場に立つ川原ご夫妻

10歳違いの子どもが2人。娘に助けられています。

結婚して来年の春でちょうど20年になります。うちは子どもが2人いるんですが、上の子が小さい頃は子育てしながらお店をやっていたので大変な時期もありましたね。子どもたちは年が10歳離れていて、娘は大学生で息子はまだ小学生なんですよ。お姉ちゃんが弟の宿題をみてくれたりご飯を食べさせてくれたりと、面倒をみてくれるので本当に助かっています。
娘は、お店が忙しいときは手伝ってくれることもありますし、お客さまに可愛がってもらっています。娘は主人とも仲がいい方だと思いますね。娘が高校生だったときには、3年間、主人がお弁当を作っていたんですよ。

主人と私はお店でも家でも一緒ですから、ときには喧嘩することもありますけど、お互い引きずらないように気を付けています。第一、喧嘩したままお店をやっていると、お客さまにすぐばれちゃうんですよ(笑)。

お店を閉めてから過ごす時間は、あまりお互いを干渉しすぎずに、好きなことをして過ごすようにしています。私は録りためたドラマを観ることが多いですし、主人は本が好きなので、よく読書をしていますね。

お客さまも主人も髪の変化に気付いてくれます。

昔から変わらない味で親しまれているメニューが多いんですよ。どじょうの丸煮とか、肉にら玉子とじとか。でも、若いお客さまにも喜んでもらえるように、グラタンなどのメニューもそろえています。人気のメニューをいくつかお出ししますので、召し上がってみてくださいね。

長くお店をやっていることもあって、常連さんが多いです。なかには、毎日足を運んでくれる方もいますし、家族で二代・三代と通うお客さまも多いです。

そんなふうにしょっちゅう顔を合わせるお客さまがほとんどですから、例えば私が髪型ひとつ変えても、「髪切ったね。似合うじゃない」とか「ちょっと切りすぎだな」とか、気さくに声をかけてくれます。そういえば、髪の色を変えたり髪型を変えたりすると、主人も必ず声をかけてくれますね。口紅の色ひとつ変えても「今日は新しい口紅だね」なんて言ってくれます。

ここ数年、白髪が気になるようになってきたので、家で髪を染めることが多いですね。お店が忙しいので、空いた時間に手軽に染められるのが気に入っています。お客さま商売ですし、下の子がまだ小学生なので、若々しいお母さんでいたいと思います。

料理を運ぶ川原まさみさん

鍋に具材を入れる川原まさみさん

かねまん自慢の料理

調理場から料理を渡す川原ご夫妻

川原まさみさんの後ろ姿

調理場で談笑する川原ご夫妻

休日は家族でお出掛け。清澄庭園へ行くことも。

娘がまだ小さかった頃は、女の子だから洋服が好きで休日によく買い物に出掛けていました。息子はやっぱりお姉ちゃんのときとは違って自然の中で遊ぶのが楽しいみたいですね。お店から電車で一駅のところに清澄庭園があって、先日もお休みの日に家族で行ったんですよ。由緒ある名石の庭ですから、小学生の息子が楽しめるか心配だったんですが、気に入ったようで親としては新しい発見でした。池の端に飛び飛びに置いてある石の上を歩いたり池の鯉にエサをあげたりできて楽しかったようです。

息子が将来の夢を聞かれて寿司屋と答えたことがありました。大衆割烹とそう遠くない夢を持っていてくれるんだなと嬉しくなりましたね。
将来は、子どもが暖簾を受け継いでくれて、親子で一緒にお店に立てたら幸せですね。息子はまだ小学生ですが、主人のように、周囲の人に優しい思いやりの心を持った男性に育ってほしいです。

清澄庭園の景色

清澄庭園の鴨

清澄庭園の景色

お店の前で仲むつまじい川原ご夫妻

老舗でありながらも肩ひじ張らない気さくなお店で、まさみさんとご主人の夫婦仲の良さが伝わってきました。お店の温かな雰囲気は、苦労しながらも暖簾を守ってきた義母さん、そして、それを受け継いだお二人のお人柄によるものでしょう。長く続くお店にはちゃんとした理由があるのだと、教えられた思いがします。

かねまんの「揚げだし豆腐」

INFORMATION

大衆割烹 かねまん

大衆割烹 かねまん

ADDRESS

東京都墨田区菊川1-7-10

TEL  03-3634-9923

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