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うつつ染めがたり > Vol.17 寺田 由利加さんの『engawa cafe & restaurant』
お店を始めて5年目です。葉山は、母方の親戚が住んでいることもあって、私にとって昔から馴染みのある土地なんですよ。この10年くらいは新しいマンションが建設されたりして、この辺の景色もずいぶん変わりました。
お店として使っているのは築80年ほどの古民家です。物件を探し始めてすぐ、この建物に出合いました。縁があったのだと思います。できるだけ元のままの状態を保ちたくて、ほとんど手を加えずに使っています。店内には木のテーブルや椅子、調度品などを置いていますが、新たに購入したものはほとんどないんですよ。たとえば、奥の畳の間に置いている大きなソファは、友人から譲り受けたもので、アメリカのアンティークだそうです。大きいし、この空間に合うのかなと思っていたんですが、すんなりと馴染みました。古民家の懐の深さを感じますね。
この建物を初めて見たとき、縁側の印象がとても強かったんです。縁側は、家族や近所の人たちが気軽に集って、会話やお茶を楽しみながら共に過ごす場所ですよね。そんな縁側のあるこの古民家を見て、店名をengawaとしました。人と人の縁をつなぐ場でありたいと思っています。
実家は長野の蓼科でプチホテルを経営しています。子どもの頃はホテルで遊びながら育ちましたし、大人になってからは家業を手伝いホテルの厨房で働いていたこともあります。母が料理人なので、食のことについては、いろいろ教えてもらいました。
お店の厨房は、もともと台所だった場所を少し手を加えて使っています。
お店でつくっている料理は、実家のホテルでつくっていたものをベースに、家庭ではなかなかつくれないものをメニューにしています。これからも、身体に良いものを、手間を惜しまずに手づくりしていきたいですね。
食材は地元のものも使いますが、あまり産地にこだわり過ぎると種類を豊富にそろえることができません。ですから、産地ではなく食材そのものにこだわって仕入れをしています。季節感も大切にしたいですし、たとえば春であれば、故郷である長野の山菜などもとりいれながら、旬のものをお出ししているんですよ。
嬉しいことに、雑誌やホームページを見て、東京からいらっしゃるお客様も多いんです。毎日、お客さまの笑顔が仕事のやりがいにつながっています。
私のほかに6人のスタッフがいて交代で働いています。みんな徒歩や自転車で通えるくらいのところに住んでいる地元の人たちなんですよ。みんな子どもをもつ母親でもあるんですが、お店の営業時間が15時までなので、無理なく働くことができます。なかには学校が終わった子どもがお店に来て、お母さんの仕事が終わるのを遊びながら待っていて一緒に家へ帰ったりとかしていますね。誰の子どもであっても自然と相手をするようになりますし、みんなで子育てしている感じです。
私には生後8か月の男の子がいますが、お店に連れてきて仕事の合間に子育てしています。料理は私がつくっているので、スタッフにあやしてもらうことも多いですね。いろんな人に抱っこしてもらうからか、うちの子、人が大好きなんですよ。誰に抱っこされてもいつもご機嫌なんです。
子どもができてから忙しくはなりましたが、その反面、何でも楽しめるようになりました。仕事でも何でも、つらいと思い出すときりがないですよね。だから前向きに考えるようにしています。
アウトドアが好きで、休日は家族や友だちとキャンプや旅行によく出かけます。キャンプではバーベキューのほかに、煮込み料理が好きなのでダッチオーブンでコトコト煮てスープをつくることが多いんですよ。
長野という地に生まれ育ったこともあって、自然のなかで過ごすのが好きなのかもしれません。子どもも自然と触れ合える環境で育てたいと思っています。
子どもができてからいろいろな変化がありましたが、髪の質が変わったような気がしますね。妊娠中は、髪の毛が抜けたりした事もあったんですが、一時的な症状と知っていたものの、正直やっぱり驚きました。いまは仕事と子育てでまとまった時間がとれないこともあって、主人と私で髪を切りっこするんですよ(笑)。
もともと髪の色は黒い方なんですが、お店には年配のお客さまもいらっしゃいますし、落ち着いた色味を保つよう心がけています。将来、おばあちゃんになったら、髪もネイルも華やかにして、その年代だからこそできるお洒落を楽しむのもいいなと思っています。